SRPP-DCアンプ「SRPP」で「DCアンプ」「SRPP」と「DCアンプ」、両方ともオーディオではポピュラーなワードだと思いますが、これの組み合わせというのは余り無いようです。 検索エンジンではそのようなアンプはヒットしませんし作例も無いようでした。 今回のイコライザアンプの終段はDCアンプにするつもりでしたが、SRPPでやるつもりは全く無く(そもそも出来ないものだと頭から思っていた^^;)、普通のシングルアンプの負荷をトランジスタで構成したハイインピーダンス回路にするつもりでした。 入力電圧を電流に変換できれば可能なんだが…と、ずっと考えていた時になひたふさんのホームページを発見しました。 ここにあるV-I変換回路はシンプルでピッタリだったので使わせていただくことにしました。 そんなわけでこの回路も無事に完成したわけです。^^ ------------------------------------------ SRPP-DCアンプ イコライザアンプの出力段に使用したSRPP-DCアンプについて書きます。 入力信号は、R1とQ1で構成された電圧-電流変換回路(V-I変換回路)により電流に変化し、それをR2に流す事によって電流-電圧変換(I-V変換)が行われ、V2のグリッドのバイアスと信号になります。 V2とV1は一般的なSRPP回路となりますので、V1のカソードが出力となります。 自動バイアス調整回路(ABC回路)は、SRPP回路の出力が0VになるようにQ1のベース電圧を調整します。 単純に入力電圧が0Vの時に電流も0にするのであれば、ベース電圧は-0.65V程度にしておけばよいのですが、そうするとR2で発生する電圧が0Vになってしまい、グリッドへのバイアスが深くなりすぎてしまいます。 そのためR2に適当な電圧を発生させて、適正なバイアスを印加させる必要があります。 ABC回路は入力電圧が0Vの時でも、ベースに適当な電圧を出力し、R2に電流を流させる事によってSRPP回路の出力が0Vになるようにします。(したがってSRPP-DCアンプの前段はOCL回路の必要があります) 増幅度は、V-I変換回路とI-V変換回路で(つまり入力からV2のグリッドまでで)R2/R1になります。 図では、22Kオーム/10Kオーム=2.2倍ということですね。 SRPP回路の増幅度は、、、、真空管によって変わると思いますので、それなりの資料をご覧ください。^^; SRPP部にはプラス電源とマイナス電源が必要です。トランジスタ等であれば絶対値が同じ電源を用意するところですが(例えば+50Vと-50V)、SRPP-DCアンプでは、プラス電源よりもマイナス電源の方が電圧の絶対値が大きくなります。 マイナス電源の絶対値は、{R3での電圧降下(プレート電流×R3)+プラス電源の絶対値(V1のP-K間電圧)+ZD1}以上となります。 例えば、プラス電源が90V、R3の電圧降下が1.9V(4mA×470オーム)、ZD1が6.2Vだったとすると、90V+1.9V+6.2V=98.1V以上になり、マイナス電圧は-98.1V以下となります。 ZD1の電圧値は、{V2のバイアス電圧+グリッドへの入力のマイナスピーク電圧}以上となります。 例えば、V2のバイアス電圧が-2Vで、グリッドへの入力電圧がサイン波で3Vp-pとすると、2V+3V/2=3.5V以上になります。 でも、このあたりの電圧はなかなか計算値どおりにはいきません。実際に試して決定します。 ------------------------------------------ SRPP-DCアンプ(2) 続きです。 入力を接地した場合の電圧値を下図に示します。 ネッ! 計算値どおりには行ってないでしょ?^^;;<自慢すな! R3の両端の電圧より、上球と下球のプレート電流は約4mAです。(R4やABC回路が入っていますが、これらはインピーダンスが高いので無視できます) 上球は4mAのプレート電流に対してバイアスは-1.886Vになり、下球は-2.425Vになります。 上球と下球は、12AU7の第二ユニットと第一ユニットを割り当てていますが、ちょっとバランスが悪いような気がしますね。 ------------------------------------------ SRPP-DCアンプ(3) 続きです。 フィードバック回路は、本来であればR4にコンデンサを直列に接続して、Q1のエミッタへの影響を抑えるべきですが、コンデンサを省略しても自動バイアス調整回路が影響を取り除いてくれる(自動的に出力を0Vにする)ので、実質的には無くても問題ありません。 逆に入れてしまうと低域において特性が変わってくると思うので無い方がいいと思います。 カソードにはゼナーダイオード(ZD1)を使用していますが、(通常の自己バイアスのように)抵抗と電解コンデンサで構成しても構いません。実際にやってみましたが、ゼナーダイオードを使った時と違いはありませんでした。 ゼナーダイオードから発生するノイズ(こことここを参照)の心配がありましたが、信号ルートから電解コンデンサを徹底して排除したかったのでゼナーダイオードにしました。 SRPP-DCアンプの前段はOCL回路(アウトプット・コンデンサーレス)にする必要があります。 コンデンサが入ってしまうとエミッタ電流が流れないためコレクタ電流も流れず、その結果R2に電圧が発生しないからです。出力がマイナス側に振れてしまいます。 フィードバック回路がありますが、出力を正常な電圧に維持するほど補正を掛けることはできません。 ------------------------------------------ SRPP-DCアンプ(4) 続きです。 自動バイアス調整回路について説明します。 この回路は、SRPP回路の出力の直流分が0VになるようにQ1のベースにバイアス電圧を出力します。 その際に、U1とC1、R6で構成される積分回路によりSRPP回路の出力を平均化します。 C1はフィルムコンデンサでまかなえる容量とし、それに合わせてR6を選定しました。 この積分回路の特性は数式で解析するのは大変ですから^^;、SIMetrixで出力させました。 縦軸は増幅度です。 出力が入力の振幅と一致する周波数は0.159Hzとなっており、10Hzでは約-36dB、20Hzでは約-42dBとなっています。 100Hz付近から下に曲がっているのは、R7とC2の影響(後述)です。 U1のオペアンプは、入力が飽和しても出力が反転しないものを使用します。 R5はR6と同一抵抗値にして、オペアンプが出力するオフセット電圧が最小になるようにします。 R7とC2はオペアンプの発生するノイズを低減するローパスフィルタです。 D1はオペアンプの出力が正電圧に振れた場合のQ1の保護用です。 ------------------------------------------ SRPP-DCアンプ(5) 最終的な回路図です。 ゲインは20.2dB、出力インピーダンスは1.56Kオームで、周波数特性は下図の通りです。 (出力インピーダンスは、10Kオームと4.7Kオームを接続して測定) ↑クリックすると拡大します。 (終わり) ジャンル別一覧
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